【相続法の改正について】


こんにちは。司法書士の岩田です。

今回は、大改正された相続法(2019年~2020年にかけて施行)について、その内容を分かりやすく説明したいと思います。


<主な改正ポイント>

 

1 被相続人の妻または夫の保護が手厚くなりました

 

2 夫婦間の居住用不動産贈与等について優遇措置が!

 

3 遺産分割協議が成立してなくても預貯金の一部払戻しがOKに

 

4 自筆での遺言書の要件が一部緩和されました

 

5 法務局での自筆での遺言書の保管制度が始まります

 

6 遺留分制度が見直されました

 

7 相続人ではない親族につき、貢献した分の金銭請求が可能に! など

 


 

そもそも、どうしてこのタイミングで相続法が改正されたの?


まずは、①前回の大きな改正が昭和55年で、それから40年も経ち、現在の社会状況に適応するよう求められたこと。

 

そして、➁高齢化が進む社会のなかで、その変化に対応するために相続法の見直しが行われたんだよ。


 

なるほど。

じゃあ、どういったところが改正されたのかな?


改正分野は色々とありますが、専門家でない方にとってはあまり馴染みのない分野もあるので、皆さんの関心がありそうなものに絞って説明します。

 

 


1 被相続人の妻または夫の保護が手厚くなりました

~「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」~


まず、今回の改正の一番大きなポイントといわれるのが、上記1の「被相続人の妻または夫の保護が手厚くなりました」について、新たな制度が創設されたことです。

 


 

ほうほう。

どんな制度が創設されたの?

 


具体的には「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」です。

 

これらは、相続開始時に被相続人の妻または夫が遺産である被相続人所有の建物に居住していた場合に、一定の要件を満たせば、終身又は一定期間、無償で居住することができる権利です。


 

配偶者居住権?

聞いたことないね。

なぜ、そんな制度を作る必要があったんだろう。

 


例えば、遺産が自宅の土地建物と預貯金が少々といった場合、不動産の価値が預貯金と比べて大幅に高くなってしまいます。

 

この場合に、被相続人の妻または夫が自宅の土地建物を相続すると預貯金の相続をすることができず、その後の生活に支障をきたすといった問題がありました。

 

逆に、配偶者が預貯金を相続すると今まで暮らしていた自宅を相続することができず、その後、自宅に居住することができない可能性が生じます。


 

他に子供などの相続人がいたら、その相続分とのバランスもあるから仕方がないのかもね。

でも、なんとかならないのかな。

 


そこで創設されのが「配偶者居住権」です。

 

これは、被相続人の妻または夫が、配偶者居住権という権利を取得することで、自宅等で居住し続けるができる権利を確保し、かつ、自宅等の所有権を相続するよりも低い評価での権利取得とすることで、他の遺産(金銭等)の相続を可能にしようとするものです


 

なるほどね。

ところで、「配偶者居住権」はどんな場合に取得することができるの?

 


「配偶者居住権」は、

・遺産分割の際に取得する方法

・遺言によって定める方法

・家庭裁判所の審判による方法

の3つの方法で取得することができます。

 

また、「配偶者居住権」は、対象の不動産に登記することも可能です。

これは、司法書士である僕たちにとっても、大きな関心事ですね。


 

そうなんだ。

他に、「配偶者短期居住権」もあるんだよね。

それは、どんなものなの?

 


「配偶者短期居住権」は、

1 被相続人の妻または夫が居住してた建物(自宅等)が被相続人の遺産であり

2 そこに被相続人の妻または夫が、相続開始時に無償で居住していたとき

 

この2つの要件を満たしたときに、自動的に発生する権利です。

 

※先ほどの「配偶者居住権」は、被相続人や相続人の意思、家庭裁判所の審判によらなければ権利が発生しません。


 

自動的に発生するんだ!!

でも、「配偶者短期居住権」だから、権利として認められる期間は短いのかな。

 


その通り!

 

「配偶者短期居住権」は、

1 遺産分割協議がまとまった日(居住建物の帰属が確定した日)

2 相続開始の時から6か月を経過する日

 

この2つの日のいずれか遅い日までが存続期間となります。


 

よく分かりました!

長くなってしまったので、また次回、続きを教えてもらってもいいですか?

 


分かりました!

 

「では、次回は<主な改正ポイント>の2以降を解説していきます。今回はこれで。それでは、また!


※ 相続法とは、そのような名称の法律があるのではなく、相続に関する法の総称をいい、主に民法第5編のことを指します。